【特殊災害対策隊日誌】Case.1 怪獣速報

 つけていたテレビ番組が切り替わる。朝の公共放送のニュース番組だ。おはようございます、というアナウンサーの声は、次に変わらない調子で、速報です、と続く。

「本日午前六時四二分ごろ、太平洋北部の公海上においてC級海洋怪獣を確認されました。怪獣は現在、西南西へ移動を続けており、日本の排他的経済水域へ接近しています」
「現在の進路予測では、怪獣はこのまま進んだ場合、東北地方太平洋沖の排他的経済水域へ進入する可能性があります」

 先月ぶりじゃん、と高校生の姉が言うから、そうだね、と私も言う。専門家が「現在はまだ公海上のため、日本による迎撃は開始されていません」「EEZ進入後、怪獣資源庁特殊災害対策隊が迎撃を開始する見込みです」と話している。テロップにも予想到達時刻が表示されて、EEZ進入は八時一〇分ごろ、東北沖接近が九時二〇分ごろとなっている。まあ、愛知県に住んでいるので、あまり関係ないけど……きっと向こうの小学校は午前中休校なのかも。羨ましいと言うと、ちょっと失礼だけど。
 アナウンサーさんは「現時点で沿岸部への避難指示は発令されていません。最新の怪獣情報にご注意ください」って話てて、きっとオルカのひとたちや、レヴィアタンのひとが出動するんだろうな、と思っていると、お母さんから遅刻するわよ、とせっつかれる。
 私と姉がはあい、とやる気のない返事をして、口の中にトーストを押し込んだ。

 🦕🦖🦕🦖

「せんせぇー」
「どうしたの、かずまくん、ゆうとくん」
「きょうね、ニュースでいーいーぜっとでかいじゅーをげーげきするっていってた」
「そうねえ、言ってたね」
「いーいーぜっとのなかで倒したら、かいじゅーはにほんのになるの?」
「そうだよ。世界の偉い人たちが、ここからは日本の場所、こっちは世界中がつかっていい場所、って決めてるんだよ」
「そうなんだぁ」
「じゃあ、きょうのかいじゅーは、にほんのになるといいなあ」

 保育園の園庭で遊ぶ子どもたちの声を背景に、保育園教諭は絵本を抱えた子どもに裾をひかれる。年少クラスの子どもとはいえ、親御さんとニュースを見ているんだな、と教諭はほっこりする。教諭は自分が子どものころは怪獣は自然災害と同じ、と言われていたのに、今ではすっかり資源化する技術が確立しているのだから面白いものだ。
 休憩時間になったら、今朝の怪獣はおそらく討伐されているのだろう。そう思いながら教諭はじりじりと高くなる日差しと時計を見て、お茶を子どもたちに飲ませなくてはと準備を始めた。

 🦕🦖🦕🦖

 夕方のニュースで、今朝出没した怪獣は無事に討伐されたという報道があった。C級Ⅰ類のエネルギー型だったらしく、国家備蓄に回されるらしい。ガソリンもこれで安くなってくれないだろうか。昔のオイルショックを覚えている世代からすれば、まだ全然安いらしいけれど。
 KFと書かれたノズルを給油口に差し込む。昔はガソリンといえば石油から生成したものだったらしい。怪獣から生成できるガソリンは、代替ガソリンとかバイオガソリンとか言われてたんだっけ。そんなことを日本史の授業で話していたような気がする。

「今回の怪獣には、第一迎撃班《オルカ》に新しく搭載された装備が使用されたとのことです」
「すでに怪獣の内部へ振動波で攻撃を与える、リップルキャノンは搭載されていますが、今回のリップルキャノンはより強い振動を怪獣に与えるそうですが……」

 C級でもオルカだけで終わったのなら、今回の新型武器は威力があったことなんだろうな、と思いながら、俺はテレビ番組を切り替えた。

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